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西尾 史恵さん インタビュー

成年後見弁護士として生かす
福祉の知識やコミュニケーション

西尾 史恵さん

弁護士
西尾 史恵さん

Profile

岡山県岡山市在住。大学卒業後、法律事務所で事務員として10年勤務後、法科大学院に進み、司法試験合格。司法修習生を経て、地方初の都市型公設法律事務所※である「岡山パブリック法律事務所」に勤務し、3年後に発足した成年後見センター所属の後見専従弁護士となる。その業務の中で福祉を学ぼうと考え、卒業時に社会福祉資格を取得。成年後見センター長を経て、2019年8月、新開設の南支所長に就任。3児の母でもある。

※公益的活動に取り組むことを目的に、弁護士会の支援・協力により設置される法律事務所。社会的・経済的な理由から受任が困難な事件や公益的事件を積極的に受任する。

全国で初めての成年後見専従弁護士として活動

Q現在のお仕事について教えてください。

公設法律事務所で弁護士・社会福祉士として、高齢者・障害者が抱える困りごとに関わっています。また、2019年8月に新たにオープンした南支所の支所長を務めています。

2013年4月より成年後見専従弁護士となり、主に成年後見業務を担当しています。成年後見業務のうち、弁護士が担う財産管理を基本に、身上監護の業務にも携わっています。
主な活動の場は病院と施設と利用者のお宅などで、一般的な弁護士のイメージとはかなりかけ離れていると思います。

Qどうして成年後見の専従になったのですか? また、専従弁護士の数は多いのですか?

弁護士になって、最初は一般の民事事件や刑事事件に携わっていたのですが、3年程経った頃、全国と同様、地元でも成年後見事件が激増していました。にもかかわらず弁護士に成年後見関係事件を担当する人がいなくて、それなら自分がと思いました。

扱う業務が90%を超えると専従と称することができるのですが、成年後見専従弁護士は私が全国でも初めてで、現在、当法人内には私を含め2人。知っている限りでは全国でも3人です。
成年後見事件は増える一方なのでニーズは高いですが、対応などの関係から、法人でないと難しいという事情もあります。

福祉の知識や対応での不足を感じて 弁護士業務だけでない幅広い活動のために

Q大学で福祉を学ぼうと思ったのはなぜですか?

弁護士は、成年後見業務における財産管理面は専門分野ですが、身上監護面においては、介護保険、障害者サービス、生活保護をはじめ、福祉に関する専門知識が不足していました。また、支援が必要な方とのやり取りは、ご本人や周りの支援者との面談・相談方法などについても、一般の法律相談とはコミュニケーション方法が異なり、特別な対応が必要で、力不足を感じていました。
支援が必要な高齢者・障害者に対し、法的サービスのみならず、福祉的なサービスも提供していくためには、福祉に関する専門知識が必要だと考えるようになりました。

また、福祉分野における相談支援業務の専門家である社会福祉士の資格を取得し、弁護士業務に留まらない幅広い活動を行っていきたいと思いました。

学習は毎日少しずつ オンデマンドだから合間にも

Q日本福祉大学を選んだ理由は?

当法人の中に、日本福祉大学の通信で学んだ社会福祉士がいて、すごくいいよと勧められ、迷わず決めました。

Q学習方法について教えてください。

忙しいからこそ、毎日やることが大切だと思いました。朝早く起きて1時間、オンデマンド講義を聴き、仕事の後にカフェなどで1時間というように、少しずつでも必ず毎日やりました。
オンデマンドなので、仕事の合間に少し時間が空いた時にも、持ち歩いているモバイルパソコンで勉強できたのがよかったですね。

法曹界でも必要な福祉の視点 社会福祉士との連携

Q法律に関わる仕事において、福祉の視点の必要性を感じますか?

例えば、日本では、権利擁護の手続きはすべて申請主義が取られ、どのような制度があり、どのような手続きをする必要があるかという福祉の知識が必要です。
また、弁護士には善管注意義務が求められ、できることは全部しなさいといった意味なのですが、それがどんどん高度になっています。そうした面からも、福祉の視点は必須と言えます。
少し前の裁判では、司法書士のケースですが、障害年金を申請していなかったことで、1千万円以上の賠償金支払いの判決が出ました。一般の弁護士は司法には強くても、福祉の手続きに関してはほぼ素人です。でも、するべき申請をしないと損害賠償が求められる時代です。 特に当法人の利用者様は、制度を使わないと生活ができない人ばかりです。社会福祉士と一緒にやっていく必要があります。

加えて、高齢者・障害者等、支援が必要な方への対応は相談援助技術が必要です。事実の確認以前にも、コミュニケーションがかみ合わないことも多々ありますが、それが話し方やコミュニケーション方法、技術を知っていると全く違ってきます。
「お辛かったですね」といった一言で感情に寄り添うだけでも、コミュニケーションがスムーズになることは少なくありません。

Qご自身も社会福祉士ですが、社会福祉士と連携しながら成年後見業務を進めています。その期待度は?

法人内でもそうですが、外部の社会福祉士のネットワークとも連携しています。
弁護士はとっつきにくいイメージがあるので、相談もまず社会福祉士に行ってもらうことがよくあります。
自分が資格を取る前も、社会福祉士が被後見人の生活を立て直すところを間近で見て知っていたので、専門職として尊敬できました。他のスタッフも同様だと思います。
成年後見のみならず色んな仕事を手掛けてほしいと考えており、障害者が刑事事件を起こした時のマニュアル作りも、成年後見専従弁護士と社会福祉士が中心になって進めました。

法曹界全体でも、社会福祉士の活動の場は広がり、期待されています。一緒にやっていきたいという弁護士も増えており、社会福祉士の採用を考えての視察も多いです。相談も受けますが、法律事務所にとっても社会福祉士は必要な存在になってきており、活動の幅を広げて利益をもたらしてくれるので、採用するならできるだけ早い方がいいと伝えています。

Qこれから、法曹界で福祉の視点はより必要となると思いますか?

超高齢社会になっていることなどから民事・刑事等の一般事件は減少傾向にあります。一方、高齢者・障害者などの成年後見関係事件、離婚などの家庭裁判所の事件は増加しています。家庭裁判所の事件は、法律の知識のみならず、人の痛みや生きづらさに寄り添う福祉的なサポートが必要です。

また、高齢者や障害者の方が刑事事件を起こしてしまう時、幼少期が恵まれない家庭環境であったり、頼れる人もおらず安心して生活できる環境になかったりということが多くあります。そのような方には刑事罰を与えるだけでは更生は困難で、福祉的な支援が必要です。

これらは一例で、法曹界全体でますます福祉的な視点が必要になっていくのは間違いありません。

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