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小林 茂さん インタビュー(2)

べてるの家と小林さんの原点

Q「べてるの家」については、本になったり映画になったりと、全国的な知名度も高まり、興味を持った人々が浦河まで足を運ぶと聞いています。

ぶらぶら カフェの概観

ぶらぶら カフェの概観

カフェの内装と販売商品

カフェの内装と販売商品

そうですね。たしかに全国から毎年たくさんの見学者が訪れてくれています。ここ数年は、年間3000人ほどの人たちがべてるの家に訪れます。ありがたいことだと思います。ただ私としては、全国の人たちに知られること以上に大事であると考えていることは、浦河という地元のつながりです。浦河という地域あっての「べてる」と考えています。
今、お話しているこの場所、「カフェぶらぶら」も「べてる」の地域の拠点となるように開設しました。このカフェ事業も「べてる」の就労サポートセンター事業の一つです。元々ここにはべてるの商品の販売コーナーがあったのですが、地元の製品を売っても地元の人は買いにきません。地域交流の場として機能していなかったわけです。そこで、東京に拠点を置く「文化NGO なまけもの倶楽部、カフェスロー」と連携しながら構想を練って、地元の業者にも関わっていただき、ここを改装しました。内装は、「地元志向」「人にも自然にも優しい」というコンセプトで、蝦夷松などの地元素材を活用し、「ストローベイル方式」というワラを積んだ物に地元の土を塗り固める工法をとりました。地域の人にも一緒に参加していただいたワークショップで作業を行いました。「ぶらぶらカフェ」も当事者スタッフが調理、接客、物販販売を担っているので、経営を不安視する人もいるでしょう。幸い、そうした心配は杞憂ですんでおります。「べてる」が大切にしている理念に「偏見差別大歓迎」「利益のないところを大切に」「それで順調」「安心してサボれる会社」「昇る人生から降りる人生」などがあります。いろいろな問題が毎日のように発生しますが、いつも予定通り「それで順調!!」ですからね。これからもやっていけると思っています(笑)。

Q「カフェぶらぶら」は、本当に居心地のいいカフェだと思います。
ところで、小林さんは今こうして「べてるの家」の生活部門のサービス管理責任者として活躍されていますが、小林さんの福祉の原点はどこにありますか?
私の原点は、実は教会の牧師としての活動からとなります。牧師養成の大学を卒業し、名古屋で教会の牧師を始めましたが、その地域の教会活動から立ち上がった知的障害分野の施設のお手伝いをすることになりました。その時、初めて身近に障害のある人と接することになったのです。正直、障害を持った方との関わりに戸惑いました。そして、福祉のことをまったく知らない自分を省みることになったのです。それから、施設で働く福祉のプロの人たちの姿からも学ぶものがありました。意図せず、福祉のことを知らない門外漢の私が福祉現場に携わることになったわけですが、いい加減な気持ちでお邪魔するようではいけないと感じたわけです。それで、私も福祉のことを学び、福祉の現場で働く方々と同じように関わりたい、と思ったのです。
ちょうどその頃に日本福祉大通信教育部が立ち上がり、2003年に編入学することができました。牧師として働き、施設に関わりながらの勉強でしたので、通信教育という学習形態は大変ありがたかったです。

自腹を切って自分に投資する。
自分を鍛え、学び続けることが大事。

Qでは、小林さんが改めて大学に求めたものは、何ですか?

べてるの活動の原点となった浦河の教会

べてるの活動の原点となった浦河の教会

大学には、何よりも学びたい学科を学ぶ機会を与えてもらったことに感謝しています。ですから、それ以上に何かをしてもらいたいという意識は不思議とありませんでした。働きながら学べる環境を与えてもらえたこと、福祉の分野に踏み込むスタートラインに立たせてもらえたことで十分と思っています。また目標ということでは、学部の卒業や資格取得は自分の学習水準をはかる目安となります。けれども、学ぶということでは、どんなに優れた教材があったとしても、それを学んだからといって現場や試験対策に即役立つということはありえません。その点、教材を学んだから何とかなるといった過度の期待はしていませんでした。私にとっての教材は、ある分野の学びへの窓口やきっかけに過ぎないと思っていました。

Qなるほど。小林さんは他の大学院へも進み、臨床心理士の資格も とられていますね。なぜそこまで学び続けるのですか?

学び続けるということについては、私の恩師の影響があります。人が何かに取り組んでいれば絶えず課題に直面することになります。だからこそ、人は学び続けることが大事だと感じています。確かに、大学で学び、資格をとって仕事に就く。それだけでも生きていけるのです。しかし、そこで自ら学ぶことをやめてしまうと自分の経験や理解に偏ります。それに自分が与えてばかりでは自分自身がいずれ枯渇するでしょう。中長期的に考えて学ばないことは自分に良いことがないといえます。それに、"いい苦労をする"というか、自分が悩み考えないと、仕事で取り組んでいることもつまらなくなるのではありませんか。日々学んで、新たなものを吸収していけば仕事もだんぜん面白くなっていきます。それに、人からの期待に応える力をつけると、自分の力量に応じた道も開けてくると感じています。
特に、福祉の現場も教会も大きな組織ではないだけに、指定された職場研修だけではなく、自分で自分の世話を心がける必要があります。自らが意識的に自己投資をして自分を養うと"支援する地力"がついてきます。べてるの向谷地生良さん(北海道医療大学教授、浦河べてるの家理事。浦河日赤のソーシャルワーカーとしてべてるの家の立ち上げに携わってきた。)は自分のことを"下町の町工場の親父"と自称していますが、より良い支援を行う工夫と、より良いものを作り上げる試行錯誤の喜びには共通のものがあります。私たちのような仕事に就く者は、良い支援の手ごたえを得るためにも自分を養い続け、工夫する作業が求められると思います。私はたぶん一生、学び続けるでしょうね。これもまた「べてる」の当事者と同じ「病気」ですね(笑)。

Q最後に、通信教育部に通う皆さんに対してメッセージをお願いします。
大学を卒業することや、資格をとるといった明確な目標も持った方がいいですね。たとえば、臨床心理士や社会福祉士は名称独占で業務独占ではないので資格がなくても仕事はできます。しかし、資格が求人の用件になっていることがありますから、資格のあるほうが就職する際に選択の幅が広がります。強いては、自分の人生の歩み方の幅が広がることにつながるわけです。それに福祉の現場も、いっそう専門性が求められてきています。ですから、資格の取得は大切なポイントになります。けれども、注意しないといけないのは、資格があることと実力があることは違うということです。資格取得後、仕事につき、自分自身の研鑽を心がけ、自分を鍛え続けることが重要だと思います。対人援助の専門職はアスリートのようなものです。自分を鍛え続けることは厳しく辛いことかもしれませんが、スポーツでもゲームでも技を磨き、真剣にプレイするから面白いのだと思います。せっかく取り組み始めたことですから、自分がわくわくするような積み重ねができると良いですよね。応援しております。

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