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當山 房子さん インタビュー(2)

Q起業して、どのような事業をしていますか?

グループホームあかゆらの前で

グループホームあかゆらの前で

在学中の2003年に、既存の有限会社の定款を変更し、新たに通所介護事業所及び居宅介護支援事業所として開業しました。その後、利用者からの要請に応えるかたちで訪問介護事業も開始しました。卒業後は、公的な部分と民間の間を埋めるような活動を展開するべく、2005年にNPO法人うつぐみを立ち上げました。NPO法人では人材育成や地域福祉の啓発活動を主要な事業として展開し、有限会社とNPO法人を両立させる形で事業を行っています。また、2007年には、以前から提供したいと考えていた地域密着型の小規模多機能型居宅介護事業所や、認知症対応型共同生活介護事業所をスタートしました。

【開業から現在へ】

2003年5月
有限会社福祉ネットワーク・やえやま設立。
通所介護事業所及び居宅介護支援事業所として開業。
2003年8月
訪問介護事業スタート。
2005年7月
NPO法人うつぐみ設立代表理事就任。
2007年1月
小規模多機能型居宅介護事業所(石垣指定)。
2007年12月
認知症対応型共同生活介護事業所(石垣指定)。
Q起業をする上で、どんな準備をしましたか?

日本福祉大学では、2001年から通信教育で学びました。これは国家資格などの取得や起業することを目的として学んだのではなく、福祉全般を基礎から学びたいとの想いで1年次から入学しました。ただ、福祉関係に限らず日頃から関心のあった「環境」の問題や、会計や組織論などのマネジメント科目まで幅広く学びました。おかげで、124単位で卒業できるところを150単位以上も修得しました。現場と学業の両立は大変でしたが、スクーリングに参加するだけでも楽しかったです。学友と出会い、意見交換や他地域の情報交換など生きた教材を通した学びができることがとにかくうれしかったことを思い出します。
また、福祉以外に学んだことは決して無駄ではなく、現在でもNPO法人で開催する「食に関連する環境問題」などをテーマにしたセミナーなどで当時得た知識が活かされています。しかし、事業を始める上で実践的なことに対する準備は、今思えば十分とは言えませんでした。やりたい想いが先で始めた事業でしたから、資金の遣り繰りや利用者の確保のことなど、スタートして1年間は相当な苦労がありました。介護保険事業は、概ね行政が請求の窓口になりますから、事務手続きに関する専任のスタッフを配置しておけばよかったと今は思います。また、提供したサービスの報酬は約2ヶ月遅れで事業所に入ることになります。その間の資金繰りのことも考えて、資金の確保は重要ですね。

【起業前後の主な出来事】

2001年
日本福祉大学通信教育部入学。
2002年
北欧における高齢者福祉の視察、行政関係者や支援者との出会いを深める。
2003年
関係者の支援を受けて起業を決意。休眠状態だった有限会社を活用して開業。
2004年
通信教育部で学友と情報交換しつつ、マネジメントの基礎について学ぶ。
2005年
日本福祉大学通信教育部卒業。
2007年
厚生労働省認知症介護指導者資格取得。
2009年
千葉大学大学院看護学研究科入学。
Q経営全般について、不安はありますか?

フロアでくつろぐ利用者さん

フロアでくつろぐ利用者さん

職員のための研修スペース

職員のための研修スペース

開業当初は、設立前の準備不足もあって行政への事務対応や利用者の確保、さらには従業員への賃金の支払いなど不安材料はたくさんありました。しかも、同志として共同経営するはずだったパートナーが開業直前に断念したため、事業開始後は一人で経営的な決断をしなければならず、そうした対応は精神的にも相当負担の多い時期でした。介護事業所を新たに単独で立ち上げるときは、すぐに利用者が確保できるとは限りませんから、ある程度利用者が定着するまで持ち出しが必要となります。最低でも1年ぐらいの固定費、特に従業員の人件費を遣り繰りする覚悟は必要ですね。ただ、関係者に想いが伝われば必要な情報が得られるもので、行政関係者から地元の商工会や融資機関を紹介していただき、何とかしのぐことができました。
開業後1年ほど経って、他の事業所では在宅サービスを継続できなかった利用者など、一人一人に対して丁寧なサービスや生活支援を繰り返すことで、少しずつ利用者が増えてきました。25名ほどの利用者が定着するころには、事業を継続する上では不安はほとんどなくなりました。しいて言えば、安定したサービス提供者の確保ですね。介護サービスの質を考えると最低でもヘルパー2級の有資格者を配置したいと思っています。でも、石垣にはそんなにたくさんの有資格者が居るわけではありませんから、事業を拡大するときや退職が見込まれるときなどは、人材を確保するのが大変なのです。

Q問題が起こったときどのように対処、解決していますか?
経営的なお金の問題は最近ではあまりありませんが、サービスの質に関しては日頃から注意しています。問題が起こったあとの必要な対処も大切ですが、そうした問題が起こらないように日頃からスタッフの育成を心がけています。介護に対する姿勢や言動など、事業所の理念を現場のなかで具体的な態度で示し、法人全体の問題解決力が向上するように努めています。ただ、問題はさまざまありますが、支援する側だけの取り組みでは変わらないこともあります。ですから、要介護者のご家族や地域との人間関係づくりや地道な啓発活動が大切だと思っています。
私個人は、認知症介護の研修など全国の関係者が集う機会などがありますから、そういう場に積極的に参加して情報交換したり、人脈を通じて相談する中で処理しています。
Q今後の展望をお聞かせください。

利用者さんの作品

利用者さんの作品

職員のための研修スペース

グループホーム あかゆらの外観

2007年12月にグループホームを開業したばかりですから、まずは入居者一人一人を大切に、丁寧な生活支援を実践していくのみですね。法人としては、あまり営利事業としての形態を好みませんので、NPO法人としての事業展開を拡大していくことを考えています。でも、事業展開の幅やスピードを考えれば法人形態を選択できる方が良い場合もあるので、NPO法人と有限会社を両輪として運営していく予定です。
今後、2015年には超高齢者社会の入り口がまっています。当然認知症の増加も見込まれますから、ますますケアの質の向上が大切だと思っています。そのためには、私たち「あかゆら」のスタッフや「うつぐみ」の活動だけでなく、地域の福祉事業所全体のレベルアップと多方面での地域内連携が重要だと思っています。地域内連携の取り組みとして、近隣に農園を開設し、利用者の皆さん、ボランティア、保育園の児童・先生等、地域の方々と協力しながら作物を育てていますが、畑仕事を通じて世代間交流を行え、とても皆さんに喜ばれています。今後も、こうした地域内での取り組みを継続的に行うとともに、地域の福祉レベル向上に貢献できるような人材の育成に力を入れる等、共生型福祉社会の実現を目指した活動を行っていきたいと思います。

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