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お知らせ

大阪地域学習会が開催されました

2010年12月25日(土)、大阪城近くのドーンセンターにおいて、通信教育部「地域学習会」が開催されました。
今回のテーマは「べてるin大阪~三度の飯よりミーティング入門~」です。本学通信教育部の第1期生であり、現在、北海道浦河町の「社会福祉法人浦河べてるの家」の生活サポートセンター長(サービス管理責任者)を務めている小林茂さんと、「べてるの家における当事者主体の援助について学ぼう」と企画し、開催しました。


【会場近くにある大阪城】

【参加教員のレポート】

今回の地域学習会は、北海道浦河より「(福)浦河べてるの家」の小林さんを招いて行われました。
「べてるの家」の実践は、いまや精神保健福祉領域にとどまらず多方面から注目されています。その活動を学ぼうという学生の熱気が、地域学習会の温かく和やかなムードのなかにも感じられました。講義はもちろんですが、講義の後に行われたSST(Social Skills Training)の演習も、非常に『べてるらしさ』を感じました。(通信教育部 学習指導講師 大野喜朗)

【「べてるの家」とは?】

「べてるの家」は、精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点として、1984年に北海道浦河町において設立されました。「(福)浦河べてるの家」「(有)福祉ショップべてる」などの活動があり、総体として「べてる」と呼ばれています。
当事者の方にとって「べてる」とは、「生活共同体」「働く場としての共同体」「ケアの共同体」という3つの性格を有しており、100名以上の方が、「べてる」と関わりながら、地域の中で暮らしています。
「社会復帰ではなく社会進出を目指し、過疎の進むまち浦河の役に立つことは何か?」という発想のもと、浦河町の特産品である日高昆布や介護用品の販売、配達、カフェ運営等の事業に取り組み、なんと年商は1億を超えています。
また、「三度の飯よりミーティング」「安心してサボれる職場づくり」「自分でつけよう自分の病名」「手を動かすより口を動かせ」「偏見差別大歓迎」「幻聴から幻聴さんへ」「場の力を信じる」「弱さを絆に」「べてるに染まれば商売繁盛」などのユニークな理念や、精神障害の当事者が、その"生きにくさ"を仲間とともに共有・研究し深めていくという「当事者研究」が福祉業界にとどまらず、各方面から注目を集めています。

【「(福)浦河べてるの家」ホームページより】

参考:福)浦河べてるの家ホームページ
新しいウィンドウを開きますhttp://urakawa-bethel.or.jp/

参考:べてるの家の情報サイトべてるねっとホームページ
新しいウィンドウを開きますhttp://bethel-net.jp/

【大阪地域学習会 当日のスケジュール】

本学参加教員
大野喜朗 <通信教育部 学習指導講師>

●当日のスケジュール

開催挨拶・スケジュール説明など(10:00~10:10)
第一部(10:10~11:00)
「イギリスと日本の精神保健福祉~<収容から地域へ>の転換を歴史的に見る~」
講師:大野 喜朗
第二部(11:10~12:00)
「べてるの家」の概要について-DVD鑑賞と質疑応答
昼食・交流会(12:00~13:00)
第三部(13:00~16:00)
浦河べてるの家の活動について/認知行動療法の講義と演習 (自分で自分をたすけることのすゝめ)
講師:小林 茂 <(福)社会福祉法人浦河べてるの家 生活サポートセンター長>
第四部(16:10~18:30)
SST(Social Skills Training)実習
講師:小林 茂
懇親会(19:00~)

地域学習会開催の様子

開催あいさつ・スケジュール説明など

まず、今回の地域学習会の企画・世話人より開会の挨拶をいただきました。「ソーシャルワークの現場の中で感じている課題について、仲間とともに学ぶことで、なんとか解決の糸口を見つけたい」との想いが語られました。参加者からも、主体的に学ぼうとする意気込みが伝わってきました。

1.第一部 大野喜朗先生による講義
「イギリスと日本の精神保健福祉~ <収容から地域へ>の転換を歴史的に見る ~ 」

続いて大野先生より、イギリスと日本の精神保健福祉の流れをご説明いただきました。

【講義概要】

精神障害者の処遇について日本と他国を比較してみると、20世紀の後半、精神病の病床が世界的に減少している中で、日本は増加している。また、日本の精神病院平均在院日数は、OECD諸国の中でも飛びぬけて長い。
イギリスとの比較で見てみると、イギリスの精神保健の歴史は、17~18世紀に収容・拘禁がはじまり、19世紀の収容の時代を経て、20世紀後半からコミュニティ・ケアへの転換が図られている。日本では、精神病への対応が始まったのが20世紀に入ってからであり、イギリスよりも約1世紀遅れてのスタートである。現在その遅れは縮まったとはいえ、今なお30年ほどの遅れがあると言わざるを得ない。イギリスをはじめとする欧米諸国で、コミュニティ・ケアへの転換が進んだのは、精神分野への医療の研究が進んだことに加え、第二次大戦後の新しい国づくりの形が、地域医療やコミュニティ・ケアの流れと合致したこと、また、公立病院が多く、国の方針がダイレクトに現場に反映されやすいことなどが挙げられる。
現在、日本においてもコミュニティ・ケアへの転換は図られつつあるが、その深さと広がりは、今後の課題でもある。


【大野先生の講義の様子】

【熱心に聴講する参加者】

2.第二部 「べてるの家」の概要について-DVD鑑賞と質疑応答

次に、本日のメインテーマである「べてるの家」の概要を理解するために、DVDを鑑賞しました。

昼食・交流会

昼食は、会場近くのカレーうどん専門店を貸し切りにして、短い時間ではありましたが、活発な交流が行われました!!

【講師を囲んだ歓談風景】

3.第三部 小林茂さんによる講義
「浦河べてるの家の活動について/認知行動療法の講義と演習(自分で自分をたすけることのすゝめ)」

昼食後は、いよいよ小林さんによる講義です。小林さんは、日本福祉大学通信教育部の第1期卒業生でもあります。

(小林さんインタビュー記事はこちら
→ 新しいウィンドウを開きますhttps://www.nfu.ne.jp/open/student/interview/student_voice/voice04_1.html )

ここでは、今回の地域学習会のテーマでもある「三度の飯よりミーティング」という理念の背景にある徹底した当事者主体の考え方(治療者が勝手に治さない、人との関係性の中で回復する)や、「苦労を取り戻すことを援助する」という基本姿勢を、浦河の精神保健福祉活動の歴史や、様々な具体的エピソードとともにお伺いしました。
「何か困ったことや行き詰ることが起きたとき、当事者よりも支援者の方が悩んでいる」「問題の起こらない支援ではなく、問題が起こっても支えていくという支援」という小林さんの言葉に、参加者はうなずいたり唸ったりしながら、一人ひとりがその言葉をじっくりと噛みしめている様子でした。
また、浦河で実践されている当事者研究や、SSTの理論的前提となっている「認知行動療法」の概論をわかりやすく講義していただき、当事者が「自分で自分を助ける」ことを目的とした、認知と行動を改善するための考え方とポイントを学びました。"ひと"と"こと(問題)"を切り離す(外在化する)こと、それを新たな言葉で語ることで新しい意味づけを行い、当事者と支援者が共同で解決に向かいやすくすること、実行しやすい小さな目標を立てることなどを、演習も交えながら理解を深めていきました。

【小林さんによる講義風景】

4.第四部 SSTの演習

これまでの講義を受けて、「べてるの家」で行われているSSTを、参加者みんなで実践してみました。進行役、記録役、当事者役、ミーティングへの参加者役に分かれ、「あいさつが上手くできない」といった悩みを抱える当事者が、今後どのように行動していくかを全員で探っていきます。SST演習のポイントは、「よかったところ」と「さらによくするところ」の2点に絞って意見を出し合うということです。
小林さんからフィードバックを受けながら、大いに盛り上がりました。

【SSTの演習風景】

5.学習会終了後の懇親会

すべての学習プログラムを終え、最後に懇親会が開催されました。当日は、本学通信教育部の「相談援助演習Ⅱ」のスクーリング開講日でもあり、大阪会場で参加した受講者及び演習担当教員の有志が、地域学習会の懇親会へ参加・合流しました。
地域学習会の会場をそのまま活用して行われた懇親会は、地域学習会を企画された皆さんが手作りでご準備いただき、参加した教職員を含めて多いに盛り上がりました。
同じ問題意識を持ち、また一日、非常に濃密な学びの場を共にした仲間同士、いつまでも話は尽きることがありませんでした。

6.最後に
参加された皆さんの感想より

参加後のレポートでは、以下のような感想がありました。ごく一部ですが、ご紹介いたします。

  • 講義では、日本における精神保健福祉の歴史とともに、イギリスなど諸外国の取り組みなどと比較することで、現状の問題点が分かりやすく理解できました。
  • 「べてるの家」で大切されているミーティングやSSTについて丁寧に教えていただいて感謝しています。また、べてるの家に行きたいです。
  • 今までの精神障害者への支援についての考え方と全く違う発想が新鮮で、確かにその通りだと実感・共感しました。
  • 支援者は、あくまで支援者であることを「わきまえて」支援しなければならないことを学びました。
  • 私自身も「べてるの家」の考え方を実践してみたいと思ったし、その取り組みを身近な所に広めたいと思いました。
  • 改めて「べてるの家」の地道で堅実な歩みに、敬服しました。その取り組みが当事者の皆さんの元気な姿に結びついていることや、つながりに結びついていることが理解できました。
  • 「べてるの家」の取り組みでは、自らを当事者研究として考察しているということに強い関心を持ちました。
  • 「病気も売ってしまう」という考え方は、まさに目からうろこでした。
  • 「どのような出来事であっても、人間は物語を変えることができる」と講師の小林さんが表現されたことが一番心に残りました。
  • 今の職場でも大いに生かせるヒントが満載の地域学習会でした。

■本件に関するお問い合わせ
日本福祉大学通信教育部事務室 地域学習会係
TEL:0569-87-2932
FAX:0569-87-2308
HP:【nfu.jp】-【問い合わせ】-【通信教育事務室】

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