様々な自然災害が続き、被災地域が広域に、かつ復旧にかかる時間も長期化している中、ボランティアのニーズは今後も高まることが予想される。その一方で、ボランティアセンターの運営支援や現場のコーディネート、外部機関や多職種との協働等、まさにソーシャルワーカーとして人や機関、サービス等をつなぐ役割を担う「災害ソーシャルワーカー」についても、ますますその重要性が高まっていくと考えられる。
本プログラムでは、専門職・非専門職を問わず、様々な職に就く社会人を対象に、災害時にそれぞれの職や立場を土台として支援に携わることのできる「災害に強いソーシャルワーカー」を養成する。オンデマンド講義によって、地域福祉、フィールドワーク、減災等に関する基礎的な知識を身につけ、数回のスクーリングを通じて、解決に向けて取り組むための実践的で応用的な力を身に付けていく。本学既卒の社会福祉士をはじめとする専門職、自治体職員、社協職員、地域や社会福祉法人の防災担当者等、幅広い層の受講が考えられ、様々な職種の社会人を対象とした、まさに多職種連携教育の実践の場にもなり得る。
加えて、全国型の通信制大学ならではのプログラムとして、異なる地域に居住する学生間が連携できる仕組み、同窓会や災害ボランティアセンターとの協働、地方自治体、社会福祉法人、企業等の外部支援者とのネットワーク構築へと展開していくことを目指す。
山本 克彦
災害多発時代といわれる昨今、地震や豪雨の際の支援の在り方への関心が高まっている。災害は多様な要因によるため、被害状況が異なり、しかもそれらは時間の経過によって変化する。フェーズごとのケース対応、地域における包括的支援、制度や法をどのように活用するのか、さらには現場を想定した人材養成等、本プログラムでは豊かな経験を持つ講師陣による学習機会が設定されている。
最終スクーリングでは、「発災後にソーシャルワーカーとしてどう動けるか」に関する知識や技術を、受講生個々の専門性や居住地に置き換えて、より個別性をもって具体化する。災害時の生活支援だけでなく、平常時に福祉防災の推進を担うことができること、そして受講者同士で広域的な多職種間のつながりを作り、万が一の災害時に相互の支援が可能なチームへと展開させていくことを描く。まさに、災害対応力(レジリエンス)の学びから、受講者発のソーシャルアクションとしての発展・展開へ。このチームに多くの受講者が参画してくださることに期待する。
以下の科目から必修項目を含む合計60時間以上を履修すること
科目名 | 開講 形態 |
時間数 (h) |
受講料 (円) |
開講日 | 開講地 | 会場 |
---|---|---|---|---|---|---|
選択環境論(注1) | T | - | 12,400 | - | - | - |
選択災害復興のための制度と法(注1) | T | - | 12,400 | - | - | - |
選択地域福祉と包括的支援体制 | O | 22.5 | 24,800 | - | - | - |
選択ヒューマンケアのための多職種連携 | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択ふくしと減災コミュニティ | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択福祉現場の人材養成 | S | 17.5 | 17,400 | 選択可9/20(土)~9/21(日) | 広島 | 広島国際会議場 |
選択可11/22(土)~11/23(日) | 名古屋 | 明治安田生命名古屋ビル(予定) | ||||
選択単身世帯と社会政策 | S | 17.5 | 17,400 | 選択可5/31(土)~6/1(日) ※5月1日以降に出願の方は申込できません |
東京 | ビジョンセンター東京京橋 |
選択可12/13(土)~12/14(日) | オン ライン |
Zoom | ||||
必修地域福祉と災害ソーシャルワーク | S | 17.5 | 17,400 | 選択可7/12(土)~7/13(日) ※6月16日以降に出願の方は申込できません |
金沢 | 金沢商工会議所 |
選択可8/23(土)~8/24(日) ※8月1日以降に出願の方は申込できません |
東京 | ビジョンセンター東京京橋 | ||||
必修被災者支援と福祉防災に向けた実践演習 (注2) | S | 17.5 | 27,400 | 2026/1/17(土)~1/18(日) | 名古屋 | ウインクあいち |
(注1)履修証明プログラムの時間数の合計には含みませんが、履修を推奨する科目です。
(注2)履修要件があります。履修要件については募集要項をご確認ください。クラス制開講科目となります。
※必修:必修科目、選択:選択科目
※選択可:いずれかの日程を選択して履修してください。
※開講形態 T:テキスト科目、O:オンデマンド科目(e-learning)、S:スクーリング科目
※同一科目で複数日程がある場合は、いずれかの日程を選択して履修してください。
※スクーリング受講時間:1日目 9:00〜19:40、2日目 9:00〜18:25
「被災者支援と福祉防災に向けた実践演習」を受講するには、以下の履修要件を満たす必要があります。
科目名 | 開講形態 | 時間数 (h) |
受講料 (円) |
受講料(入学選考料・入学金は含みません) |
---|---|---|---|---|
【選択】ヒューマンケアのための他職種連携 | O | 11.25 | 12,400 | 74,600円 〜 154,000円 ※選択する科目によって異なります。 |
【選択】単身世帯と社会政策 | S | 17.5 | 17,400 | |
【必修】地域福祉と災害ソーシャルワーク | S | 17.5 | 17,400 | |
【必修】被災者支援と福祉防災に向けた実践演習(注1) | S | 17.5 | 27,400 | |
合計 | - | 63.75 | 右記を参照 |
(注1)履修要件有、クラス制開講科目
※2024年度時点の内容となります。2025年度の内容への更新は1月上旬を予定しています。
※時間数に含みませんが履修推奨科目です。
環境の身近なテーマから地球規模の課題まで幅広く学ぶ。
今世紀半ば(2050年代)には地球上から食料不足や飢餓といった問題は解決するだろうとされている。他方で、今世紀末になっても解決が困難とされるのが民族対立であり、またジェンダーの問題、そして温暖化に代表される地球レベルの環境問題である。今日を生きる我々にとって基本中の基本の学習課題が「環境問題」であるといって過言ではなかろう。本科目では、入門レベルとして、環境の身近なテーマから地球規模の課題まで幅広く学んでいく。
※時間数に含みませんが履修推奨科目です。
被災後に想定される課題の具体例、その課題を解決するために設けられている被災者支援のための制度やしくみ、その根拠となる法律について学ぶ。
災害時に被災者が抱える課題は、食料、物資、医療等のニーズだけにとどまらない。これまでの日常生活が突如として脅かされ、生活を再建していくうえでのありとあらゆる悩みが一挙に押し寄せる。住まい、仕事、家庭などのあらゆる場面で、お金とくらしに関わる課題が多数浮かび上がる。それらを解決していくためには、被災者への経済的かつ精神的な支援や寄り添い活動が必要とされる。まずは希望をもって、一歩を踏み出したり、他の機関や士業と連携して支援をするきっかけをつくっていくことが何よりも重要になる。すなわち、被災者に対して専門家が果たすことができる役割とは、被災者に有益で役立つ生活再建や支援の情報を整理して提供することから始まる。そして、個別の課題に応じて、情報提供をし、支援制度の活用や手続きに誘導し、他の専門士業へのつなぎを行い、あるいは協働していくことで、被災者の生活再建の達成を目指すことになる。このような災害時における支援活動は、ソーシャルワークそのものであり(災害ソーシャルワーク)、ソーシャルワーカーにとって重要な役割となる。本科目では、まず、被災後に被災者が抱える悩みを具体的な事例とともに概観し、その課題を解決するために設けられている支援制度やしくみ、その根拠となる法律について基本的かつ実践的な知識を学んでいく。そのうえで、災害後の生活や被災者を支えるために、ソーシャルワーカーとしてどのように活動できるかや、他の領域の専門家との連携やコーディネーターとしていかなる役割を果たすことができるのか等についても学びを深める。
地域福祉の基本的な考え方とともに包括的支援体制を理解する。また地域福祉の推進方法について理解する。
●地域福祉の基本的な考え方、展開、動向について理解する。
●地域福祉における主体と対象を理解し、住民の主体形成の概念を理解する。
●地域福祉を推進するための、福祉行財政の実施体制と果たす役割について理解する。
●地域福祉計画をはじめとした福祉計画の意義・目的及び展開を理解する。
●包括的支援体制の考え方と、多職種及び多機関協働の意義と実際について理解する。
●地域生活課題の変化と現状を踏まえ、包括的支援体制における社会福祉士及び精神保健福祉士の役割を理解する。
ヒューマンケア(対人援助)における多職種連携の基本と原則について、広い視野にたって基礎的な理解を図る。
多職種連携および多職種連携教育/学習について、「ふくしの総合大学」としての本学のコンセプトに則し学ぶ。総論的には、ヒューマンケアについて福祉経営以外を学ぶ人々との共通理解を育むとともに、多職種連携と地域連携の基礎的理念、考え方、知識等を、社会保障や地域包括ケアの概念を含めて伝える。各論としては、暮らしのさまざまな場面を切り口に、そこに関わる多様な職種や地域主体がいかに連携するかを検討する。ヒューマンケアと人々が連携・連帯することについて、外部講師のお話もうかがい、幅広く学ぶ。全体を通じて、多職種連携の必要性について認識するとともに、その困難性や課題などについて問題意識の醸成を図る。
ふくしの視点で地域減災について理解するとともに、市民としての役割を知る。
普段の暮らしを維持していくための「ふくし」と、万が一の災害時に被害を最小限にとどめるための「減災」、その減災に向けた取組みを行なう「コミュニティ」の三者は、いずれも密接に関わっている。この科目では人々の「ふだんの・くらしの・しあわせ」を守っていくための広域的な視点、地元の視点、一市民としての視点からそれぞれ学び、地域コミュニティが減災に果たす役割について考えていく。
「福祉理念・理論と実践の融合」のできる福祉専門職を育てるためのキャリア形成および職場環境整備について学ぶ。
人材育成とは、長期的な視野に立ち、個人の成長を促進するため、必要なことを習得できる環境を与え、整えることである。福祉現場という組織において、将来的に不足する知識・技術の獲得し、福祉専門職としての適性のある人材の育成、組織の目的に貢献していく能力を開発することが重要である。福祉経営における人材育成という観点でみれば、社会保障制度が目まぐるしく変わり、1990年代の社会福祉基礎構造改革以降、大きく変化した。措置から契約へ移行した福祉現場におけるキャリア形成をキャリア理論も含めて幅広く議論していく。福祉現場は、多くの専門職がチームで利用者のケアや支援に携わる。それぞれの専門職の役割や多職種連携の具体的方法、リスクマネジメント、キャリアパスシステムの構築、福祉現場における人事考課システムの在り方、福祉現場の働き方改革、採用・評価・人材育成・報酬・労使関係など、具体的な人材マネジメントのあり方などをグループワークのディスカッションを通して学んでいく。先駆的な人材マネジメントを展開している福祉施設の事例なども紹介していく。
単身世帯の増加がもたらす課題と今後求められる政策について考察する。
日本は、「家族依存型福祉国家」と言われている。しかし、単身世帯が増加するなど、家族の形態が大きく変化している。そこで、単身世帯を切り口にして、日本社会の課題とその対策を考える。具体的には、単身世帯の増加の実態とその背景についてデータに基づいて理解する。また、単身世帯は、二人以上世帯に比べて、貧困、社会的孤立、要介護時の対応などの点で生活上のリスクが高い。このような生活上のリスクに対して、求められる政策 ―社会保障の機能強化、地域づくり、働き続けられる社会― を考える。最後に、家族の支え合いを前提に構築されてきた日本型福祉国家が、現在岐路に立っていることを認識し、今後の方向性を考える。
災害多発時代の多様な事例から災害時の福祉支援を学び、災害ソーシャルワークを実践的に理解する。
●災害について知るとともに、被災した地域における環境の変化や、多様な被害について理解する。
●災害のフェーズを時系列に整理し、各場面での福祉支援を具体的に理解する。
●災害時に顕在化する多様な生活課題について、ソーシャルワークの展開を基本として理解する。
●災害時の多職種連携のあり方や、福祉施設等における事業継続(BCM・BCP)について理解する。
●地域福祉の視点から防災・減災について学び、個人や組織としての役割を理解する。
「発災後にソーシャルワーカーとしてどう動けるか」に関する知識や技術を、自身の専門性や居住地に置き換えて、より個別性をもって具体化していく。
大規模な災害発生後、被災地からの支援のニーズは段階的に多様化し、それに伴い、支援者には幅広い知識や想像力、臨機応変に対応する力、そして広域的で多職種にわたる機関や団体、人とつながる・つなげる力が必要とされる。
本スクーリングでは、他の科目でこれまで培ってきた「発災後にソーシャルワーカーとしてどう動けるか」に関する知識や技術を、自身の専門性や居住地に置き換えて、より個別性をもって具体化していく。1日目には災害被災者に対する中長期の「生活支援」を中心に学び、2日目には演習を通じて、履修者が平時においても福祉防災の推進を担う力を身に付けていく。そして、受講者同士で広域的な多職種間のつながりを作り、長期的なネットワークとして構築していくことで、万が一の災害時に受講者間で組成する、あるいはお互いに支援が可能なチームへと展開させていくこと目指していく。