2025年には約700万人、65歳以上の高齢者の5 人に1人が認知症になると見込まれている。2015年に厚生労働省は、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現する」ために、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)を策定し、2019年に認知症施策推進大綱、2023年に共生社会の実現を推進するための認知症基本法が示された。WHO においても、認知症は優先的に取組むべき政策であることが提起されており、認知症は日本国内のみならず世界的な課題である。
また、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもと、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保されるサービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築が進められている。今後さらに増え続けるであろう認知症の人に対して、認知症の人がたどる初期から終末期のステージに応じた地域包括ケアシステムの構築の推進は非常に重要である。
認知症の人の「その人らしい暮らしの継続」を支えるためには、認知症への適切かつ多面的な理解が必要である。本プログラムでは、本人がその症状によって失いがちなその人らしさ(個性・意思・尊厳)を保ち、本人が持つ力を発揮できることを支えるために、1.認知症の人の症状や特徴などの基本的理解を深め、知識を身に付けること、2.認知症の人の特徴をふまえたケアの理念を理解し、尊厳を重視すること、3 認知症の人の特徴に応じた地域包括ケアのあり方について考察できることを目指すものである。
中島 民恵子
私自身もみなさんも、誰でも認知症になりえます。認知症の人の症状や抱える生活のしづらさを理解することは、本人を支えるためにとても大切な第一歩となります。一方、認知症の人に関する知識を持てば持つほど、私たちは目の前の認知症の人を「認知症」という枠に当てはめてしまいがちです。枠に当てはめてしまうと、個々の認知症の人が持つ個別性を尊重できないまま、支える側本位の関わりを継続してしまうことになります。
認知症の人の抱える生活のしづらさは周りの関わり方で大きく変わります。今の生活のしづらさはどこからきているのか、なぜそういう状況であるのかを常に本人や家族と向き合いながら考え、本人の言葉、表情、過去の状況などを含めて理解しようという姿勢が非常に大切だと考えます。本講義でのオンデマンド科目、スクーリング科目を通して、認知症の人がその人らしく暮らしができることを支えるために何が大切かを一緒に考え、学びあうことができることを楽しみにしています。
以下の科目から必修項目を含む合計60時間以上を履修すること
科目名 | 開講 形態 |
時間数 (h) |
受講料 (円) |
開講日 | 開講地 | 会場 |
---|---|---|---|---|---|---|
選択高齢者の心理 (注1) | T | - | 12,400 | - | - | - |
選択死生学 (注1) | T | - | 12,400 | - | - | - |
必修認知症の医療とケア | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択高齢者福祉 | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択権利擁護と成年後見 | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択精神障害者支援論 | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択ケアマネジメント入門 ※隔年開講 2024年度開講 |
S | 17.5 | 17,400 | 選択可6/22(土)~6/23(日) ※6月1日以降に出願の方は申込できません |
大阪 | 新大阪丸ビル別館 |
選択認知症ケアと多職種連携 | S | 17.5 | 17,400 | 選択可6/29(土)~6/30(日) ※6月1日以降に出願の方は申込できません |
名古屋 | 明治安田生命名古屋ビル |
選択可8/24(土)~8/25(日) ※8月1日以降に出願の方は申込できません |
Zoom | |||||
選択地域共生社会と地域づくり | S | 17.5 | 17,400 | 選択可5/25(土)~5/26(日) ※5月1日以降に出願の方は申込できません |
東京 | あいおいニッセイ同和損保新宿ビル |
選択可7/20(土)~7/21(日) ※7月1日以降に出願の方は申込できません |
浜松 | アクトシティ浜松 | ||||
選択可9/28(土)~9/29(日) | 富山 | タワー111 | ||||
必修認知症の人と地域包括ケア (注2) | S | 17.5 | 27,400 | 12/14(土)~12/15(日) | 名古屋 | ウインクあいち |
(注1)履修証明の時間数の合計には含みませんが、履修を推奨する科目です。
(注2)履修要件有、クラス制開講科目
※ 必修:必修科目、選択:選択科目
※ 選択可:いずれかの日程を選択して履修してください。
※開講形態 T:テキスト科目、O:オンデマンド科目(e-learning)、S:スクーリング科目
※同一科目で複数日程がある場合は、いずれかの日程を選択して履修してください。
※スクーリング受講時間:1日目 9:00〜19:40、2日目 9:00〜18:25
「認知症の人と地域包括ケア」を受講するには、以下の履修要件を満たす必要があります。
科目名 | 開講形態 | 時間数 (h) |
受講料 (円) |
受講料(入学選考料・入学金は含みません) |
---|---|---|---|---|
【必修】認知症の医療とケア | O | 11.25 | 12,400 | 77,000円 〜 154,000円 ※選択する科目によって異なります。 ※別途、科目等履修生登録料、継続料が必要となります。 |
【選択】高齢者福祉 | O | 11.25 | 12,400 | |
【選択】権利擁護と成年後見 | O | 11.25 | 12,400 | |
【選択】精神障害者支援論 | O | 11.25 | 12,400 | |
【必修】認知症の人と地域包括ケア(注1) | S | 17.5 | 27,400 | |
合計 | - | 62.5 | 右記を参照 |
(注1)履修要件有、クラス制開講科目
※2023年度時点の内容となります。2024年度の内容への更新は1月上旬を予定しています。
※履修証明プログラムの時間数の合計には含みませんが、履修を推奨する科目です。
高齢者の心理について学ぶ。
急速な高齢化が進み、高齢者の心理への関心が高まっている。また、高齢者支援において、高齢者個々人のニーズにこたえるためには、支援が必要な問題の理解だけでなく、高齢者の性格、言動、経歴、家族関係などを含めた個人理解が必要である。この科目では、①高齢者の心理を理解する視点を学び、②加齢によるさまざまな心理機能の変化を理解すること、③老年期におこりやすい心理的問題を理解すること、④高齢者に対する心理的援助方法を考えることを目標とする。
※履修証明プログラムの時間数の合計には含みませんが、履修を推奨する科目です。
「死を学ぶこと」は「生きることを学ぶこと」であるという立場から、人間としての生きることの<価値>について考察する。
『生と死について学ぶ―死生学』 自らの死を経験してきたものはいない。しかし誰もが確実に死と直面することになる。それは、他人の死、かけがえのないものの死、死に逝く自分というかたちで。先人たちはそうした死と直面し、そこからさまざまな思想や世界観を生み出してきた。死がタブー化されたといわれる現代社会において、彼らの足跡をたどりながら、同時に、新しい死生観を考えていくことは、必要なことであり、有意義なことであろう。本講義では、死生学の歴史と現状、さまざまな死生観とその変遷、延命・生殖・安楽死などをめぐる生命倫理の考え方を取り上げて、死について学ぶことの重要性とその積極的な意義を示したい。「死を学ぶこと」は「生きることを学ぶこと」であるという立場から、人間としての生きることの<価値>について考えたい。
認知症の医療とケアの基礎的知識を理解し、認知症の人、本人の尊厳を重視するケアの実現に向けた学びを深める。
認知症の人への適切な支援を行っていくためには、疾患別ステージ別の症状や特徴を理解することが大切である。例えば、アルツハイマー型認知症では、直近のことを忘れ、時間・場所・人があいまいになることによる生活上の困難が起こる傾向、レビー型小体認知症では幻視や歩行障害などによって生活上の困難が起こる傾向がある。共通した症状もあるが、疾患ごとに症状の特徴が異なる。一方で症状にばかり焦点をあててしまうと、認知症という枠にその人を当てはめて見てしまい、その人の本来の姿や力を見落としてしまう可能性もある。本講義では、認知症の医療とケアの基礎的な知識を理解し、認知症の人、本人の尊厳を重視するケアの実現に向けた学びを深める。
超高齢社会における諸課題及び高齢者に対する支援について多面的・多角的に検討する。
「高齢者」のイメージを統計資料や制度政策を通して理解し、超高齢社会における諸課題及び高齢者に対する支援について多面的・多角的に検討する。また、高齢者に対する直接的な支援の理解にとどまらず、地域福祉の視点や社会開発までを意識した、超高齢社会で求められるソーシャルワーク実践についての理解を深める。
ソーシャルワーカーとして、判断能力の不十分な認知症高齢者や知的障がい者、精神障がい者等の権利を代弁する役割、手段・方法について、日本国憲法の基本原理、民法、行政法、社会法等の関わりの中で理解する。
認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者等の判断能力が不十分な方々の権利擁護を考えるにあたり、日本国憲法の下に存在する様々な法律の関わりがあることを知り、また、成年後見制度、虐待防止法等の権利擁護の法制度が複合的な支援システムとして位置づけられていることを明らかにしていく。さらには、関係機関の役割、具体的な事例を通して、権利擁護の現状と課題について理解する。
精神障害者が社会においてよりよく暮らすにあたって、その支援のあり方を学ぶ。
本講義では、精神障害者が社会において、よりよく暮らすにあたって、その支援のあり方を学ぶものである。ちなみに、2011 年の障害者基本法の改正において、発達障害者が精神障害者の中に含まれることになった。そのことから、本科目で精神障害者と言う場合、発達障害者も含むものである。まず、精神障害者がいかなる社会的支援を活用することによって、等身大の暮らしが実現するかについて考える。とはいえ、「精神障害者」という用語そのものが多様な解釈がなされることから、障害による特徴や課題を提示する。また、精神障害の有無に限らず、人が生き生きと暮らすにあたって、「働く」ということが重要となるため、その関係を示しつつ、一方で、就労支援等についても実践的に迫る。さらに、社会保障制度、とりわけ経済的支援について、生活支援にからめつつ、具体の諸制度を紹介しながら、精神障害者の暮らしについて検討する。そして、精神障害者の「働く」を含めた暮らしの実際や経済的支援等を通して、生活支援とは何か、を明らかにすることが本講義の目的である。
●精神科を持つ病院や福祉施設で精神保健福祉士として勤務した経験のある教員が、精神保健福祉に関する講義を行う。
ケアマネジメントの基本理念や目的を理解し、自立した生活を継続するための包括的な支援としてのケアマネジメントプロセスについて学ぶ。
ケアマネジメントは、一般的に①インテーク→②アセスメント(情報収集と生活課題の分析)→③プランニング(個別介護目標の設定と計画・立案)→④サービスの実施(ケア実践)→⑤モニタリング(中間評価)→⑥サービス評価→⑦再アセスメントのプロセスを経ていく。それぞれの段階においては、それを支える理論が基盤となっている。その理論の整理をおこない、介護現場におけるそれぞれのステージの課題を抽出することが学習目標である。 また、自立支援、特にクライアントの意思決定支援の具体的方法、利用者ニーズのとらえ方、福祉現場の不適切ケア、権利擁護等について学ぶ。利用者主体性の原則から考えれば、フェルトニーズ(デマンド)を重視するが、専門的視点からのノーマティブニーズをどのように反映していくかが大きな課題でもある。例えば、食事場面の「経口」か「経管」か、「安全」か「自由」か、「行動制限」と「拘束」の違い、尊厳あるケア実践とは。実際の介護現場で起こる価値観の違いを理解して、どのように多職種連携によるチームアプローチを実践していくかなど、事例を通して議論を行っていく。
●担当する教員は、福祉施設で相談援助業務に従事し、かつ社会福祉法人理事長である教員が、その経験と知識を元にケアマネジメントについて講義を行う。
認知症の人の暮らしの継続を多職種で支える意義と方法について学ぶ。
2026年には約700万人、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると見込まれている。認知症ケアは個別性が高く、支援の方法も多様である。今後さらに増え続けることが予想されている認知症の人の「その人らしい暮らしの継続」を支えるためには、専門職間および地域の関係者との適切な連携なしでは十分に対応できなくなってきている。本講義では、本人がその症状によって失いがちなその人らしさ(個性・意思・尊厳)を保ち、本人が持つ力を発揮できることを支えるために、①認知症の人の症状や特徴などの基本的理解を深め、②認知症の人を取り巻く専門職の役割や多職種で連携し支援するあり方を学ぶ。
地域共生社会・地域福祉の目指す、住民の福祉活動の姿を明らかにするとともに、それを「地域づくり」に生かす方法を学ぶ。
地域共生社会・地域福祉の考え方の中核を成す「地域づくり」は、戦後の社会福祉の発展の中で一貫して大切にされてきた。この「地域づくり」について、社会福祉制度が未成熟な時期、成熟していく過程、成熟化した時期(まだ不十分な点はあるが)で一貫して変わらない点と、大きく変化をしてきた2 点に焦点をあて、十分な理解をすすめる。また、社会福祉分野の中では、「地域づくり」は社会福祉協議会の仕事といった印象が強いが、古くから施設法人等、他の社会福祉関係者も取り組みを行ってきた。地域共生社会の考え方においては、施設法人も「地域公益活動」などを含めて、福祉の視点での「地域づくり」をすすめていくことが求められている。本講義では、地域共生社会・地域福祉における「地域づくり」の理念と実践を学ぶとともに、今後の自らの活動の展開を目指して、具体的な実践方法を学ぶ。
認知症の人が地域で暮らし続けられるための包括的な支援体制について共に学び考える。
高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもと、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保されるサービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築が進められている。今後さらに増え続けることが予想されている認知症の人に対して、認知症の人がたどる初期から終末期のステージに応じた地域包括ケアシステムの構築の推進は非常に重要である。本講義では、地域で認知症の人を支えるための具体的な実践方法を知り、認知症の人の特徴に応じた地域での包括的な支援体制について、共に学び考えることを目的とする。