厚生労働省が3年に1回実施している2020年の患者調査によると、精神疾患を有する人は、約614万人となっている。人口比で言うと、0歳児から高齢者までを含め、現に精神疾患により医療機関を受診している者は、20人に1人ということになる。一方で、2004年に厚生労働省が発表した「こころのバリアフリー宣言」には、5人に1人が精神疾患にかかると記されているのである。つまり、現に精神疾患に罹患している人は、20人に1人であり、生涯にわたると、5人に1人というように、高い割合を示している。
また、発達障害については、2004年に発達障害者支援法ができると共に、2011年に障害者基本法において、「精神障害(発達障害を含む)」と明確に規定されることになった。このこともあり、年々高い関心が示されるようになっている。加えて、文部科学省(2022)からは、小中学生のうち、8.8%が発達障害の可能性がある、というような報告もある。
しかしながら、精神障害や発達障害は、他者との関係性のなかで、生きづらさが大きくもなれば、小さくもなると言える。そのことから、障害を有していることを表明せずに暮らしを継続している人も少なくない。
このような現状のもと、精神・発達障害は、見た目や経験則では、障害による特性がわかりづらいと言える。一方で、特性がその人に占める割合は、決して大きくはない。特性もさることながら、人としての当たり前の喜怒哀楽をはじめとする共通性を知ることこそが意義深いと言える。まずは、人ありきである。そのうえで、特性への理解を深めることによって、本当の意味での当事者理解と共に、共生社会に近づくことになると言えよう。
本プログラムでは、精神・発達障害のある人が、ごく当たり前に暮らすに当たって、就労支援をはじめとする、いかなる生活支援が必要かについて理解を深めることを目指す。具体的には、暮らしにおいて、どのような要素が求められると共に、周囲のかかわりとして、いかなる事柄が必要となるのか。これらのことについて、考察をすることが本プラグラムの目的である。
青木 聖久
誰もが一度きりの人生、豊かに暮らしたいと、当たり前に願っています。例えば、その一つとして、人は働くことを通して、多くの体験ができると共に、生きがいにもつながります。でも、「障害を持っている」という理由で、それらの体験ができない事になれば、何とももったいないことになります。
とはいえ、精神・発達障害者が障害による「生きづらさ」があることも事実です。また、その生きづらさは、わかりづらいのです。それは、周囲もさることながら、本人や家族にとっても、時に常態化によって、生きづらさに気づきづらかったりします。
これらのことをふまえ、本プログラムでは、彼らの日常の暮らし、さらには、働く場面まで、多様な「知る」を通して、就労をはじめとする生活支援についての考察を目指します。
また、本科目は多様な科目から構成されていますが、実践経験を有する教員より、複数のオンデマンドが作成されています。それぞれ、こだわりつつ、楽しみつつ、張り切って作成した力作です。
精神・発達障害者の暮らしの実際を通して、受講されるみなさんが、社会福祉実践の魅力と可能性を考える機会になればうれしいです。いずれにせよ、皆さんとライブ(スクーリング)や画面(オンデマンド)で出会えることが楽しみでなりません。たくさんの受講をお待ちしております。新たな扉を、思い切って開けてください…。
以下の科目から必修科目を含む合計 60 時間以上を履修すること。
科目名 | 開講 形態 |
時間数 (h) |
受講料 (円) |
開講日 | 開講地 | 会場 |
---|---|---|---|---|---|---|
必修精神障害者支援論 | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択アディクションとソーシャルワーク | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択発達精神病理学 | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択権利擁護と成年後見 | O | 11.25 | 12,400 | - | - | - |
選択精神障碍者と福祉実践 I | S | 17.5 | 17,400 | 選択可5/17(土)~5/18(日) ※4月16日以降に出願の方は申込できません。 |
大阪 | 新大阪丸ビル別館 |
選択可10/11(土)~10/12(日) | 名古屋 | 明治安田生命名古屋ビル | ||||
選択精神障碍者と福祉実践 II | S | 17.5 | 17,400 | 選択可7/26(土)~7/27(日) ※7月1日以降に出願の方は申込できません。 |
大阪 | 新大阪丸ビル別館 |
選択可11/1(土)~11/2(日) | オン ライン |
Zoom | ||||
選択スクールソ-シャルワークと学校現場 | S | 17.5 | 17,400 | 選択可7/5(土)~7/6(日) ※6月16日以降に出願の方は申込できません。 |
名古屋 | 明治安田生命名古屋ビル |
選択可11/22(土)~11/23(日) |
髙松 | 香川県社会福祉総合センター | ||||
選択司法と福祉の連携とソ-シャルワーク | S | 17.5 | 17,400 | 選択可9/13(土)~9/14(日) ※8月16日以降に出願の方は申込できません。 |
オン ライン |
Zoom |
選択可11/1(土)~11/2(日) |
東京 | ビジョンセンター東京京橋 | ||||
選択社会保障の制度と課題 | S | 17.5 | 17,400 | 選択可6/21(土)~6/22(日) ※6月1日以降に出願の方は申込できません。 |
東京 | あいおいニッセイ同和損保新宿ビル |
選択可7/26(土)~7/27(日) ※7月1日以降に出願の方は申込できません。 |
福岡 | 福岡県中小企業振興センター | ||||
選択基礎から学ぶ発達障害の理解と支援 | S | 17.5 | 17,400 | 選択可7/5(土)~7/6(日) ※6月16日以降に出願の方は申込できません。 |
オン ライン |
Zoom |
選択可10/4(土)~10/5(日) |
大阪 | 新大阪丸ビル別館 | ||||
選択可2026/1/10(土)~1/11(日) | 名古屋 | 明治安田生命名古屋ビル(予定) | ||||
選択多様なニーズに応える特別支援教育 | S | 17.5 | 17,400 | 選択可5/24(土)~5/25(日) ※5月1日以降に出願の方は申込できません。 |
名古屋 | 明治安田生命名古屋ビル |
選択可9/6(土)~9/7(日) ※8月15日以降に出願の方は申込できません。 |
オン ライン |
Zoom | ||||
選択可9/20(土)~9/21(日) ※9月1日以降に出願の方は申込できません。 |
神戸 | 神戸ファッションマート | ||||
必修精神・発達障害者の理解と共働 (注1) | S | 17.5 | 27,400 | 2026/1/17(土)~1/18(日) | 名古屋 | ウインクあいち |
(注1)履修要件があります。履修要件については募集要項をご確認ください。クラス制開講科目となります。
※ 必修:必修科目、選択:選択科目
※開講形態 O:オンデマンド科目(e-learning)、S:スクーリング科目
※同一科目で複数日程がある場合は、いずれかの日程を選択して履修してください。
※スクーリング受講時間:1日目9:00~ 19:40、2日目9:00~18:25
「精神・発達障害者の理解と共働」を受講するには、以下の履修要件を満たす必要があります。
科目名 | 開講形態 | 時間数 (h) |
受講料 (円) |
受講料(入学選考料・入学金は含みません) |
---|---|---|---|---|
【必修】精神障害者支援論 | O | 11.25 | 12,400 | 77,000円~198,800円 ※選択する科目によって異なります。 ※別途、科目等履修生登録料、継続料が必要となります。 |
【選択】アディクションとソーシャルワーク | O | 11.25 | 12,400 | |
【選択】発達精神病理学 | O | 11.25 | 12,400 | |
【選択】権利擁護と成年後見 | O | 11.25 | 12,400 | |
【必修】精神・発達障害者の理解と共働(注1) | S | 17.5 | 27,400 | |
合計 | - | 62.5 | 右記を参照 |
(注1)履修要件有、クラス制開講科目
※2024年度時点の内容となります。2025年度の内容への更新は1月上旬を予定しています。
精神障害者が社会においてよりよく暮らすにあたって、その支援のあり方を学ぶ。
本講義では、精神障害者が社会において、よりよく暮らすにあたって、その支援のあり方を学ぶものである。ちなみに、2011年の障害者基本法の改正において、発達障害者が精神障害者の中に含まれることになった。そのことから、本科目で精神障害者と言う場合、発達障害者も含むものである。まず、精神障害者がいかなる社会的支援を活用することによって、等身大の暮らしが実現するかについて考える。とはいえ、「精神障害者」という用語そのものが多様な解釈がなされることから、障害による特徴や課題を提示する。また、精神障害の有無に限らず、人が生き生きと暮らすにあたって、「働く」ということが重要となるため、その関係を示しつつ、一方で、就労支援等についても実践的に迫る。さらに、社会保障制度、とりわけ経済的支援について、生活支援にからめつつ、具体の諸制度を紹介しながら、精神障害者の暮らしについて検討する。そして、精神障害者の「働く」を含めた暮らしの実際や経済的支援等を通して、生活支援とは何か、を明らかにすることが本講義の目的である。
●精神科を持つ病院や福祉施設で精神保健福祉士として勤務した経験のある教員が、精神保健福祉に関する講義を行う。
アディクションからの回復とそのためのソーシャルワークについて考察を深めていく。
「何かに依存している」という言葉は、ネガティブな印象をもって語られることが多く、支援の現場においても表面的な問題の対処に苦慮し、結果として医療・保健・福祉の領域で「依存症は難しい」「依存症にはかかわりたくない」という忌避感情の強い現状がある。しかしアルコール健康障害対策基本法施行(2014年)、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律施行(2016年)、ギャンブル等依存症対策基本法(2018年)、精神保健福祉士養成課程の養成の在り方等に関する検討会中間報告書における依存症支援体制整備の必要性(2019年)というように、依存症対策及び依存症への支援の必要性は広がりを見せ、ソーシャルワークにおいても実践の質の向上が急務である。本講義では依存症をアルコールや薬物の物質依存にとどまらず、行動嗜癖を含んだより幅広い概念である「アディクション」ととらえ、アディクションに対するソーシャルワークの視点とアセスメント、支援の方法について講義し、アディクションからの回復と回復へのかかわりについて考察を深めていく。
●精神科医療機関(診療所)で精神保健福祉士として勤務した経験のある教員が、精神保健福祉やソーシャルワークに関する講義を行う。
心の発達を理解することにより、自閉スペクトラム症を理解してその発達に付き合える。かつ、アタッチメントの発達がうまくできていないことの理解を深める。
発達障害という言葉が、世の中に広がっている。それを脳の障害と考えてしまうことによる思考停止が、対応を考えることに悪影響を与えてしまった。よく見ていくと、発達の遅れと考えることで理解できることが多い。発達の遅れは、多くはバラツキによるものであり、必ずしも病的現象ではない。身長や体重の違いを病気として理解しないことと同じである。ただ、こころの育ちは遅れを認めてもらえないことによって新たな負荷を受けることになる。そのことによる二次的な現象が起きてしまう。こうしたことを理解しながら付き合うことによって成長を認めることができる。その子自身の発達に丁寧に付き合うことが、今求められていることである。こうしたことを講義を通して理解することが狙いである。
ソーシャルワーカーとして、判断能力の不十分な認知症高齢者や知的障がい者、精神障がい者等の権利を代弁する役割、手段・方法について、日本国憲法の基本原理、民法、行政法、社会法等の関わりの中で理解する。
認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者等の判断能力が不十分な方々の権利擁護を考えるにあたり、日本国憲法の下に存在する様々な法律の関わりがあることを知り、また、成年後見制度、虐待防止法等の権利擁護の法制度が複合的な支援システムとして位置づけられていることを明らかにしていく。さらには、関係機関の役割、具体的な事例を通して、権利擁護の現状と課題について理解する。
当事者の生の声等を通して、精神障碍者のことを理解すると共に、社会福祉実践について学ぶ。
本科目では、統合失調症を中心にして、精神障碍者のことを様々な側面から知ることを目指す。そこで、精神障碍者や家族が、これまでどのようなプロセスを辿り「いま・ここに」いるのかや、いかなる社会的背景のなかで暮らしているのかについて、着眼する。また、精神保健福祉士が、どのような魅力と可能性を有する専門職であるのかについても、第一線で活躍している者の話等を通して、理解を深めることを目指すものである。さらに、「自分が精神保健福祉士になる・精神保健福祉士を活用する」等、様々な「自分及び自分たちができること」について考える機会とする。そして、精神障碍者や家族に対する実践的な支援のあり方について学ぶことを目的とするものである。
●精神科を持つ病院や福祉施設で精神保健福祉士として勤務した経験のある教員が、精神保健福祉に関する講義を行う。
当事者、実践者、科目担当者の講義等を通して、メンタルヘルス課題におけるソーシャルワーク実践への理解を深める。
本科目は「精神障碍者と福祉実践Ⅰ」の発展科目である。「精神障碍者と福祉実践Ⅰ」では、精神障碍者の置かれている現状と課題に対する福祉的視座からの理解、そして精神保健福祉士の実践について学んできた。本科目は、さらにウイングを広げ、メンタルヘルスの課題について理解していくとともに、メンタルヘルス課題に対するソーシャルワークがどのようにあるべきかを深めていく。そのことで、メンタルヘルス課題とそれを取り巻く社会のありようを精神保健福祉の共通的な課題として言語化していくとともに、ソーシャルワークの視点を醸成していくことを目指していく。
●精神科医療機関(診療所)で精神保健福祉士として勤務した経験のある教員が、精神保健福祉やソーシャルワークに関する講義を行う。
学校現場での子どもたちの現状を理解し、学校におけるソーシャルワーク実践の基礎知識と意義を理解する。
いじめ、不登校、暴力行為、自殺などが教育現場で生じている問題状況や背景には、子どもの心の問題と複雑に絡み合った環境的な問題がある。いま、子どもたちと環境に働きかけ、それらの問題に取り組むスクールソーシャルワーカーの活躍が期待されている。本講義では、教育の場で生じている諸問題を理解し、学校という生活の場で展開されるソーシャルワークの課題について考え、子どもたちへの支援の必要性を理解する。
刑事司法の理念と仕組み、罪に問われた人を支える司法と福祉の連携、ならびに、様々な立場におけるソーシャルワーク実践のあり方について学ぶ。
近年、罪に問われた高齢者、障がい者等への福祉的支援の必要性と重要性が認識され、司法と福祉の連携による支援が進められている。これに伴い、刑事司法分野等へのソーシャルワーク専門職の配置が進み、新たな領域でのソーシャルワーク実践が行われてきた。罪に問われた人たちの社会復帰を支えるには、これら司法分野のソーシャルワーカーの実践に加え、地域で活動するソーシャルワーカー、さらには、住民、保健・医療・福祉・教育等の関係機関との連携による支援が必要不可欠である。この講義では、刑事司法の理念と仕組み、罪に問われた人を支える司法と福祉の連携、ならびに、様々な立場におけるソーシャルワーク実践のあり方について、ドイツにおける取り組みも参考にしながら学ぶことを目的とする。
年金保険制度を中心に、社会保障の諸制度が果たしている所得保障の役割について学ぶ。
年金保険制度が果たしている所得保障の役割について学ぶ。日本の公的年金保険制度の体系、国民年金保険制度及び被用者年金保険制度の仕組みと現状、日本の公的年金保険制度の課題について理解することを目標とする。さらに、今日の社会生活において、老齢年金、障害年金を頼りに生活している人々の現状についても紹介し、公的年金保険制度が果たしている所得保障の役割を理解すると共に年金保険制度の課題について理解を深める。社会保障の諸制度と日本の社会経済の変遷について学ぶ日本は1961年に国民皆保険、皆年金を実現し、本格的に社会保障の諸制度の充実、給付対象者の範囲の拡大、給付レベルの向上などが図られ、福祉国家が実現した。医療保険制度、年金保険制度をはじめとして、どのような社会経済背景の下で、その内容の充実が図られたのか、社会保障の諸制度の充実と社会経済との関係を理解すると共に、少子高齢化及び経済のグローバル化が進んでいる今日の日本においては、どのように社会保障の諸制度の再設計を行うべきか等について理解することを目標とする。
健やかに暮らし生きていくという視座から、発達障害にかかわる理解と支援の基礎を学ぶ。
本講義では、健やかに暮らし生きていくという視座から、発達障害にかかわる医学、福祉、心理、教育に対する理解と支援の基礎を学ぶ。特に、マクロレベル、メゾレベル、個々人や家族にかかわるミクロ(マイクロ)レベルにおける、発達障害の知見(理解)と支援に留意する。具体的には、発達障害の課題を広く理解していくために、発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症、「第四の発達障害」に関連する児童虐待や愛着障害など)の状態、脳科学を通した病態生理、制度・政策、現場での支援や保護者支援の方法、そして専門職役割を取り上げて、その現状について事例をあげて検討する。 発達障害をめぐる現状には、制度・政策としては共生社会を指向し、支援の在り方だけではなく、人権を重んじ、差別の禁止が謳われるとともに、地域の福祉施設や保育・教育機関、職場においては、発達支援、福祉的支援、教育的支援、就労支援が拡充されてきた。医療機関においても認知療法など様々な療法が取り入れられ、その一方で、家族会や当事者の会の活動もみられる。さらに、世界にも目を向け、発達障害の取り組みについて比較研究の視点から学び、有用な支援モデルについても考察する。
障害や病気の子どもに対する特別支援教育、貧困やLGBT(SOGI)に対する教育的支援、そして共生社会について学ぶ。
特別支援教育について基礎から学ぶ。法制度、対象児、その社会的背景、支援・指導の現状、多職種連携による支援の重要性、支援ツールとしてのICF、そして、共生社会における特別支援教育の意味について理解をすすめる。特別支援教育には社会的文化的脈絡―「サラマンカ宣言」、国連採択の「児童の権利条約」や「障害者の権利条約」、WHO総会採択のICF(国際生活機能分類)、また、子どもの人権やグローバルな動きなどが織りなされている。また、特別支援教育と関連して、共に育ち特別支援教育について基礎から学ぶ。2007年、特別支援教育は本格的にスタートし、障害や病気の状態によりニーズのあるすべての子どもを対象としている。その対象児童生徒、法制度(「合理的配慮」)や歴史的経緯、支援・指導の実際、支援ツールとしてのICF、そして、共生社会における特別支援教育の意味について事例を通して学ぶ。特別支援教育に織りなされる構成要素には社会的脈絡がある。「サラマンカ宣言」、国連採択の「児童の権利条約」や「障害者権利条約」、WHO総会採択のICF(国際生活機能分類)など、子どもの人権やグローバルな動きも影響を与えている。特別支援教育にはまた、子どもがともに育ち、ともに学び、そして現在の共生社会に対する課題を意識しながら、現在では、インクルーシブ教育システム、基礎的環境整備、合理的配慮を具現化するための取り組みが重ねられている。保護者支援もまた重視されている。いま、支援のかたちは全人的であり包括的であることが求められる。その意味で、海外の事例にも目を向けたい。また、学習上行動上生活上の問題として、貧困やLGBT(SOGE)さらに虐待や愛着障害を背景に、教育的配慮や支援が必要な子どもが存在し、施策や方策が講じられている。以上のように、本講義では、障害、慢性疾患、貧困、LGBT(SOGI)などの「いま」に注目し、教育現場における校内外の教育、福祉、医療、心理専門職や地域の施設との連携による特別支援教育や教育的配慮について、理念と制度と実践を通して理解を深める。
当事者の生の声や科目担当者の講義、さらには、受講生相互の交流等を通して、当事者理解と共働について学ぶ。
2013年の障害者雇用促進法の改正により、2018年から精神障害者が、法定雇用率の算定基礎に加わることになった。したがって、段階的に企業の法定雇用率が上昇することから、精神障害者の雇用が喫緊の課題となっている。その一方で、2020年度のハローワークにおける新規の就職件数は、精神障害者が全障害者のなかにおいて、半数以上を実質的に占めている。とはいえ、精神障害者の職場定着率は、きわめて厳しい状況にある。なお、2011年の障害者基本法の改正により、発達障害者が精神障害者に含まれることになった。よって、精神障害者の範囲には、発達障害者、さらには、高次脳機能障害者も含んでいる。他方、近年うつ病等を患いながら、勤務を続ける者や、職場復帰を目指す者も多い。これらのことからも、職場で精神・発達障害者と働くことについて、知識や技術を持つことは、重要なこととなる。また、職場管理の立場の者にとっては、法定雇用という側面のみならず、精神疾患を生み出さない会社づくり、という点からも意義深い。以上のことをふまえ、本講義では、各々の学生が主体的参加のもと、まず、テーマについて考え、事前レポートを提出することから始める。そして、グループワークで深めることによって、精神・発達障害者のニーズ把握、共働のあり方等をはかる。また、精神・発達障害を持っている者の生の声を聴く機会も設ける。これらを通して、本講で、職場において精神・発達障害者と共に働くことの意味と意義、さらには、実践的な方法等について学ぶことを目的とする。
●精神科を持つ病院や福祉施設で精神保健福祉士として勤務した経験のある教員が、精神保健福祉に関する講義を行なう。