上勝町(いろどり)地域学習会が開催されました

 今回は、徳島県勝浦郡上勝町で開催されました地域学習会をご紹介します。 上勝町は徳島県の中部に位置し、人口約2000人で高齢化率がおよそ50%に達する小さな中山間のまちです。通信教育部のスクーリング終了後、交流会でたまたま隣席した出会いがきっかけとなり、大阪府在住と徳島県在住の二人の通信生の協力によって地域学習会の企画・開催となりました。四国には、本州から3本の橋が架かるなど、各県からの交通の便も比較的よく、今回の上勝町地域学習会では、西は福岡県から東は埼玉県からもご参加いただきました。

 本学からは、通信教育部長の雨森先生、社会福祉実習教育研究センターから杉本先生、通信教育部学習指導講師の元岡先生の3名が同行し、高齢者が元気になる地域づくりのコツと地域資源の魅力を十二分に実感することのできた1泊2日の学習会となりました。

参加教員のレポート

 「葉っぱビジネス」としていまや世界からも注目されている上勝町において、地域学習会を開催しました。上勝町といえば「彩」事業ですが、その他にも「ゼロ・ウェイスト宣言」や住民参加型のまちづくり活動・芸術活動など、見どころは多彩です。学習会では、彩の「つまもの」で飾られた食事も堪能しつつ、高齢化と過疎化を逆手にとって、まちづくりの先進地として再生した町の秘密を探りました。 (社会福祉実習教育研究センター 杉本 浩章)

上勝町の風景

≪世界が注目する上勝町の葉っぱビジネス≫

「葉っぱビジネス」とは"つまもの"、つまり日本料理を美しく彩る季節の葉や花、山菜などを、販売する農業ビジネスのことです。株式会社いろどり代表取締役である横石さんが「彩(いろどり)」と名づけてスタートしました。葉っぱビジネスのポイントは、軽量で綺麗であり、女性や高齢者でも取り組める商材であること。現在の年商は2億6000万円。中には、年収1000万円を稼ぐおばあちゃんもいます。それを支えるのはPC(ブロードバンド・ネットワーク)。決まった数量を毎日出荷するのではありません。おばあちゃん達はPCを駆使し、全国の市場情報を収集して自らマーケティングを行い、葉っぱを全国に出荷するのです。PCでは自分が町で何番目の売上を上げているかの順位等も分かるようになっており、こういったビジネスモデルの全てが良い刺激になり、更なる発展へつながっています。

(いろどりホームページより引用)

上記に続く「いろどりストーリー」はいろどりのホームページよりご覧ください。
http://www.irodori.co.jp/asp/nwsitem.asp?nw_id=2&design_mode=0

【上勝町地域学習会 2日間のスケジュール】

参加教員:雨森 孝悦(通信教育部 教授)
       元岡 征志(通信教育部 学習指導講師)
       杉本 浩章(社会福祉教育研究実習センター 助教)

【1日目】

9:30  〜      徳島駅に集合後、上勝町へ移動
10:30 〜 11:30 地域における関連事業(第3セクター)の見学
11:30 〜 12:00 学習会会場にてオリエンテーション
12:00 〜 13:00 館内にて食事
13:00 〜 14:30 講義@:「上勝の地域づくり 〜いろどりの実践とこれから〜」
           第3セクター鰍ゥみかついっきゅう(月ヶ谷温泉)
           専務取締役 美馬 由実 様
14:30 〜 15:30 講義A:「地域再生と福祉」
           通信教育部 雨森 孝悦 教授
15:30 〜 16:30 参加者全員でワークショップ
16:30 〜 17:00 振り返りとまとめ ※終了後は、宿泊先にて教員を交えて懇親会が開催されました。

【2日目】

9:00 〜 12:00 上勝町内にてフィールドワーク

・ NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー(ごみゼロ運動)の活動
・ いっきゅう茶屋の視察
・ 上勝町アートプロジェクトの見学
・ 第三セクター 株式会社もくさん
・ 棚田ほか、上勝の地域資源の見学

12:00 〜 13:00 2日間の振り返り
           終了 解散

上勝町(いろどり)地域学習会 開催の様子

 学習会の会場は、上勝町の第3セクターの一つである鰍ゥみかついっきゅうが運営する月ヶ谷温泉内の研修会場をお借りしました。徳島駅から会場への移動に合わせて、地域における関連事業の各現場を見学させていただきながら現地へ向かいました。

徳島駅から上勝町へ移動
見学の様子

 

 学習会の会場へ到着し、オリエンテーションとアイスブレーキングの後、色とりどりのつまものが飾られた「いろどりご膳」を全員で早速いただきました。

会場となった月ヶ谷温泉「月の宿」 つまものに彩られた「いろどりご膳」

 

 実際の「つまもの」を拝見した後、同法人専務取締役 美馬由実 様より、上勝町が取り組んできた地域づくりの歴史についてお話いただきました。1981年に経験した大寒波を乗り越え、高齢化しつつあった生産農家の皆さんと「葉っぱビジネス」の仕掛け人と言われる横石さんらが協力して取り組んできた経緯について、エピソードを交えながら分かり易くお話いただきました。お話がひと段落すると参加者や教員から、質問がいくつか出ましたが丁寧にご対応いただきました。

実際のつまもの
講義:「上勝の地域づくり 〜いろどりの実践とこれから〜」の様子

 

 同行した雨森先生からは、人口減少や高齢化によって限界集落とも言われる中山間部の衰退の現状やグローバルな経済危機の背景を前提として、地域の問題解決を目指すソーシャルビジネスとしても注目される他地域での取り組みに関して「地域再生と福祉」と題してご講義いただきました。

講義:「地域再生と福祉」の様子

 

 講義終了後は、参加者のグループを二つに分け、それぞれのテーマでワークショップを行いました。閉じこもりがちな高齢者を如何に地域へ引っ張り出すか、地域づくりを推進するにはどんな資質が必要か、をテーマに積極的な意見が出されました。

ワークショップの様子
参加者全員で記念撮影

 

 1日目の夜には、教員を含めた交流会が開催されました。食事をしながら、それぞれの地域福祉に対する想いが語られました。

 

 2日目には、中山間の地域特性を実感するために、上勝町の町なみや自然などさまざまな地域資源を見学しました。山間部の変わりやすい天候にもかかわらず、終日天気に恵まれました。

上勝町の棚田
上勝アートプロジェクト
さまざまな第3セクター事業

参加された皆さんの感想より

参加後のレポートでは、以下のような感想がありました。ごく一部ですが、ご紹介いたします。
・ 地域再生の取り組みには、あきらめずにへこたれずに続けていくことの大切さと人と人の横のつながりがないと進んでいかないものだと感じました。
・ 講義では書籍などに書いてある以上のご苦労や困難があったことをお聞きでき、多くのアイデアや地域での人と人とのつながりで継続してこられたことを知りました。
・ 上勝町の皆さんは、一人ひとりがとても笑顔で、楽しんで仕事をしている様子が伺えました。
・ 学習会を通じてまちの活気を肌で感じることができ、自分自身、元気をもらった気分です。
・フィールドワークと言う形で参加された皆さんとご一緒でき、自宅学習や会場でのスクーリングでは得られない知識を得たように思います。
・ 各地域で、このような学習会を準備・開催し、支えてくださっている方に感謝です。
・ 学習会での体験は、これからの自分が目指す目標に向けて、大切な動機付けとなりました。

■本件に関するお問い合わせ
日本福祉大学 通信教育部事務室
電話番号:0569-87-2932
FAX 番号:0569-87-2308