名古屋地域学習会が開催されました

 2009年10月25日(日)、愛知県名古屋市において通信教育部「地域学習会」が開催されました。見学・訪問させていただいた社会福祉法人和進奉仕会 特別養護老人ホーム平田豊生苑(名古屋市西区)から児玉克己施設長をはじめ、スタッフの方々より多大なご協力をいただき、学習会としても大変充実した一日となりました。本学からの参加者26名は、午前10時に平田豊生苑に到着。午前中は苑内のホールにて児玉施設長よりご講義いただき、昼食もそのままホールにて、参加者全員でご一緒させていただきました。ご準備いただいた食事では、苑が配達事業として地域に出している手作りのお弁当が出ました。あまりの美味しさにあちらこちらから感嘆の声が上がり、学習会全体がなごやかなムードとなりました。午後からは、3つのグループに分かれて施設内の見学。その後ホールに集合して再び児玉施設長のお話しを伺い、参加した教員や学習指導講師とともにグループワークを行いました。学習会は午後4時に終了し、その後は場所を変え、懇親会も行われました。

■社会福祉法人和進奉仕会 特別養護老人ホーム 平田豊生苑 HPのご紹介

http://washin.or.jp/hoseien/index.html

所在地:名古屋市西区

■特別養護老人ホーム平田豊生宛の誕生秘話(同法人 HPコラムより引用)

【平田豊生苑のスタート】
 1995年(平成7年)2月、竣工式に向け突貫工事が進む中、「何をしたらいいのかすら分からない」少々焦り気味のむくつけき3人の男たちが、すきま風の絶えない、壊れかけたプレハブの暖房のない寒々とした一室でジンフィーズを飲みながら、決めたことが3つあった。

 そのひとつは、「制服(ユニホーム)なんぞはやめよう」理由は簡単で、ひとりの男が極度の制服アレルギーだったのだ。なぜその男が極度の制服アレルギーなのか他の2人にはおおむね察しはついた。70年代に青春を送ったその男は制服に身を固めた連中にこっぴどく痛めつけられた苦い過去を持ち、心やさしき2人はその男の病んだ心を受け止めたのだ。

 もうひとつは、「役職で呼ぶことはやめよう」これも簡単に決まった。3人の男たちの中に役職で呼ばれることに陶酔を覚える感覚の持ち主がいなかったことと、役職者がその立場で号令を発するのではなく、合議のもとに事を決め、進めていきたいとの思いを共有することができたからだ。

 そして、最後に決めたことがあったが、これは簡単には決まらなかった。それが「同性介助でいこう」だった。
これが、ほろ酔い気分の男たちが決めた平田豊生苑の指針の第一歩だった。

(平田豊生苑10周年誌より)

参加教員のレポート

 たくさんの方々が出席されて、介護高齢者の住処について学習会が開催されました。平田豊生苑の常務理事・施設長の児玉様の講義では、今日の介護保険制度が介護高齢者の生活の質向上や主体的意思決定を困難にしていることをお教えいただきました。施設見学を終えて行われたグループ討議や討議後の2次会では出席者それぞれが高齢者になった場合の住処をどう考えるかについて議論が盛り上がりました。(新谷 司)

【地域学習会 当日のスケジュール】 10:00開始、16:00終了

参加教員 : 新谷 司(通信教育部 教授)
関口 和雄(福祉経営学部 教授)
浅井 純二(通信教育部 学習指導講師)
松林 愛(通信教育部 学習指導講師)

10:00〜11:30 児玉克己 施設長(常務理事)の講義
          テーマ:「特別養護老人ホームの現状と課題」
11:30〜13:00 昼食(配食事業のお弁当)、コーヒータイム
13:00〜14:00 施設内の見学
14:30〜15:30 ディスカッション、グループ発表
15:30〜16:00 参加教員によるまとめ

※終了後は場所を変えて、多くの参加者とともにゲスト講師、教員を交えて懇親会が開催され、大いに盛り上がりました。

名古屋地域学習会 開催の様子

■児玉 施設長(常務理事)による講義の概要

 介護保険が導入される以前(措置の時代)の振り返りから、介護保険導入によって何が変わったか、現状はどうなっているか、講義の前半は、比較的淡々と話が進められました。特別養護老人ホーム入所待機者は、年々増大しています。全国では45万人、名古屋市では2009年3月現在2万人(複数の施設に申し込みしているので実際は5000人と推測)におよぶ待機者がいます。今年に入ってから名古屋市は、今までの地域密着型を目指す方針から、大型の特別養護老人ホームへと方向転換することで待機者数への対応を図ろうとしています。しかしそれで問題が解決するのでしょうか・・・。課題はいくつもあります。
特別養護老人ホームの課題としては、入所する利用者の見直しも考えられます。施設や職員の質を問う前に、生活者の視点から利用者の「生活の質」を高めることが優先されるべきであると考えます。介護度重視、施設経営的観点から、生活者の意志決定が尊重されていない現実があるのです。特養が現代の姥捨て山になっていないだろうか。入所者を管理するのではなく、当事者の生活支援をすることが特養の使命であることは、大前提なのです。また、当事者の施設外での生活の場も確保されなければならないと考えます。 

(児玉施設長のお話より)

児玉施設長によるご講義
学習会参加者の様子

施設内の見学

 昼食は苑内で全て手づくりされているお弁当を参加者全員で苑内のホールでいただきました。お弁当には、手書きのお品書きが添えられており、会場のあちらこちらから絶賛する声が聞こえていました。お弁当の一品一品を味わいながら、午前中の講義の感想について盛り上がっていました。コーヒータイムの後、児玉施設長ほか2名の職員のご案内で、3つのグループに分かれ、施設内の見学をさせていただきました。
 平田豊生苑が他の特養と大きく異なる特徴としては、まず「施錠しない」こと。「住人さん」と呼ばれる入居者は、1階から5階まで苑内を自由に行き来できるだけでなく、施錠されていないので建物の外へ出ることも出来ます。次に、平田豊生苑では基本的に同性介助。5階の展望風呂には、何種類もの浴槽があり、住人さんは自分の入りたいお風呂に、同性の介助で入浴できます。介助する側、される側ともに裸になってのおつきあいです。3階、4階が住まいのスペース。各部屋は、勿論バリアフリーで、4人部屋、2人部屋、個室と3パターンあり、畳の部屋もあります。
「自分がされていやなことは、住人さんにもしない」、これが児玉氏の信条。シンプルだけど、実行するのは難しい。見学者のだれもが、その難しいことがきちんと守られている施設内の様子に、驚嘆し、感動の声が上がっていました。

配食事業のお弁当とお品書き
施設内見学の様子

ディスカッション及びグループワークの発表

 施設見学のグループのまま、ホール内にて3つの島をつくり、ディスカッションを行いました。テーマは「自分だったらどういう終の住処で過ごしたいか」。各グループでは、活発な論議が行われ、グループ毎の発表・共有の後、新谷先生によるまとめがありました。

ディスカッションの様子 グループ別の発表
参加教員によるまとめ

参加された皆さんの感想より

 「一般的な特養のイメージとは違い、利用者本位のサービスを目指していることがわかった」「自由度の高い住人さん(利用者)の表情が印象的だった」「自己選択、自己決定、自己責任という言葉が重い。年齢に関係なく自分もそう生きていきたい」など、参加された皆さんのレポートには非常に満足度の高い感想が書かれていました。

■本件に関するお問い合わせ
日本福祉大学 通信教育部事務室
電話番号:0569-87-2932
FAX 番号:0569-87-2308