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伊藤 純子さん インタビュー

海外ボランティア経験から
幅広い福祉の学びを志す

伊藤 純子さん

社団法人青年海外協力協会に所属し、
JICA横浜(独立行政法人国際協力機構横浜国際センター)でボランティア事業を担当
伊藤 純子さん
神奈川県横浜市在住

Profile

横浜市総合リハビリテーション事業団の知的障害児・肢体不自由児通園施設で、10年間発達に障害を持つ子どもやその家族の療育支援を行う仕事に就いた後、「青年海外協力隊」に参加し、養護隊員としてヨルダンに渡る。2年間の活動を終え帰国後、かねてから希望していた知的障害者の作業所に勤務。その後、青年海外協力隊員を支援するフィールド調査員として再びヨルダンへ渡る。計4年間の派遣活動の国際協力の経験を活かし、現在は「JICA(独立行政法人国際協力機構)横浜」で、ボランティア事業担当として勤務。主に神奈川県内でJICAボランティアの募集説明会の実施や、神奈川県出身ボランティアが出発前や帰国後に自治体へ表敬訪問する際の調整や支援など、幅広い業務で忙しい日々を送っている。日常業務に追われる中で、国内での経験と国際舞台での経験を活かせる「社会福祉士」になることを目指し、日々勉学に取り組む。趣味はテニスとヨガ。

伊藤さんが暮らす神奈川県横浜市

横浜市のシンボルマーク

横浜市のシンボルマーク

横浜市は、神奈川県の県庁所在地であり、日本の市町村の中で最も人口が多く、現在360万人を超えている。古くから港町として栄えながら、2009年には開港150周年を迎え、名実ともに日本を代表する国際港湾都市となった。そのため、異国情緒溢れる名所が点在し、観光スポットとして人気が高く、国内外から訪れる人が多い。また、2010年11月7日(日)から8日間、APEC(アジア太平洋経済協力)横浜が開催され、首脳会議をはじめとする様々な会議が予定されている。米国大統領や中国国家主席など、21の国や地域の首脳・閣僚、経済界の代表、マスコミ関係者など約8,000人が横浜を訪れる。

福祉のエキスパートになりたい

Q福祉の道へ進んだきっかけは何ですか?
子供が大好きで、将来保育士なろうと短大に入学し、臨床心理士の先生に影響を受けたことをきっかけに福祉に興味を持つようになりました。知的障害児通園施設でアルバイトを始め、そのまま就職し、就学前発達障害児の運動機能やコミュニケーション能力の向上等を目指して、家族の方と連携しながらリハビリや訓練を行ってきました。
働き始めて8年目くらいから、成人期の知的障害者を支援したいと考え始めました。そして、生涯を通じた支援ができる支援者のエキスパートを目指すため、10年で一区切りと考え、施設を退職しました。
その後、目指す環境で働き始める前に、いつか挑戦してみたいと考えていた青年海外協力隊に参加し、養護隊員として、知的障害児の支援活動をするためにヨルダンへ渡りました。組織を離れて、自分にどれくらいの力があるのか試してみたい、という気持ちがありました。
そもそも、青年海外協力隊の活動に興味を持つきっかけをくれたのは、同じ施設で働いていた同僚でした。彼女は、青年海外協力隊に参加する夢をずっと持っていたため、施設を3年で退職し、協力隊としてホンジュラス(中米に位置する共和国)に渡りました。夏休みを利用して彼女に会いに行き、彼女のイキイキと活躍する姿を目の当たりにしたことで、今まで考えもしなかった新しい道が開き、いつか自分もチャレンジしてみたいという思いを抱くようになりました。

ヨルダンでの葛藤

Qヨルダンの福祉の現場で、日本と特に違いを感じたことは何ですか?

社会開発省マダバ特殊教育センター

社会開発省マダバ特殊教育センター

日常の療育風景

日常の療育風景

当初派遣先として希望を出したのはアジア圏でしたが、JICAの決定でヨルダンに派遣されることが決まりました。もう必死でアラビア語を覚え、不安と期待を胸にヨルダンに渡り、「さあ、今までの経験を活かして充実した活動をするぞ」と考えていた私の思いとは裏腹に、ヨルダンでの活動はスムーズに進みませんでした。
ヨルダンの福祉施設で働く人の多くが自ら希望して福祉の仕事に携わっているわけではなく、私が派遣された施設も例外ではありませんでした。職員はプロという意識が無く、モチベーションも低く、子供たちを軽蔑するような人までいて、まずそのことに衝撃を受けました。また、イスラム教の教えである悪いことをしたら罰を受けるのは当然という教えから、子どもたちが、「食事をしない」「職員の指示に応じない」「大声を出す」等、たとえそれが障がいによるものであっても、職員が日常的に体罰を与える場面も多く、現地のやり方をなかなか受け入れることができませんでした。
さらに、子供たちの置かれている状況も日本の福祉の現場と大きく違っていました。施設へ来るまでの子供たちは、「障がいがあることでDVを受けていた」、「家が貧しくて国王の家の前に捨てられていた」等、機能障害・能力障害と同時に貧困や差別の問題も抱えていました。家族と共にケアをする日本の現場との違いに戸惑い、特に最初の一年は言葉の壁もあり、ボランティア活動の難しさを痛感しました。そのような状態の中で、私を支えてくれたのは、JICA事務所のコーディネーターの存在、協力隊仲間や先輩からの助言、そして、目の前の子どもたちの日々の変化でした。
それらを支えに、少しずつ施設職員とも距離を縮めていくことができました。

Qヨルダンから帰国後に社会福祉士を目指したのはなぜですか?
養護隊員としての役目を終え帰国後、希望していた地域活動ホームの現場へ就職しました。ところが、どこか自分の気持ちの中にわだかまりのようなものがあり、納得して働くことができないという気持ちが募り、もんもんとした日々を過ごすのです。理由を探ったところ、ヨルダンでの最初の活動では満足できていなかったことに気付きました。
そこで、再びヨルダンに渡るという道を選びました。今度はコーディネーターとして、養護隊員のメンバーを取りまとめ、彼らが働きやすいよう側面からケアする仕事に就きました。
その活動の中で、「自分には、社会福祉に取り組むためのバックグラウンドが欠けているのではないか」という思いが徐々に大きく膨らんでいきました。大事な場面で遠慮してしまったり、コンプレックスを感じてしまっている自分を変えるため、ヨルダンから帰国後に社会福祉士の取得を心に決め、特に「国際協力」や「社会開発」についても同時に学習できる日本福祉大学通信教育部に入学しました。

「福祉」と「国際協力」で目指すところ

Q今はどんなお仕事をされていますか?
JICA横浜で主にJICAボランティアの募集広報を担当しています。特に青年海外協力隊やシニア海外ボランティア等、JICAボランティアの活動に興味を持って下さる方々を対象に神奈川県各地や大学、専門学校などに出向き、「JICAボランティア体験談&説明会」を開催し、JICAボランティアを知ってもらうことは、とても重要で大切な仕事です。その時は、一度に100人以上の方たちの前でお話をしなければならないこともあるのですが、実は人前で話すことがとても苦手です。いつも緊張して、お腹が痛くなることもあるのですが、それでもやり続けるのは、ヨルダンで体験した心が震えるような感動や、他では味わえない達成感・喜びを少しでも多くの方にお伝えしたいからです。思いが伝わり、熱い気持ちを持ったJICAボランティアの希望者が増えてくれれば、なにより嬉しいことです。それがとても難しいことでもあるのですが。
Qさまざまな経験を積まれた伊藤さんが今後目指すところは?
国内の福祉施設で行ってきた療育の現場は、障がいを持つ方たちとその家族の問題に真摯に向き合っているスタッフと共に働くことができたやりがいのある素晴らしい仕事でした。一方で、ヨルダンでの葛藤しながらも夢中で過ごした日々もたまらなく面白く、「わくわく感」が溢れていました。振り返ってみると、どの経験も優劣が付けられない貴重な経験ばかりでした。
私がやってきたこと、またこれから貢献していきたいと考えていることは、たまたま国内であれば「福祉」であり、海を渡れば「国際協力」と言えるのではないかと考えています。
この考えは、青年海外協力隊に参加する前からずっと何となく頭の中で考えていたのですが、『リハビリテーション国際協力入門』(久野研二・中西由紀子著)という書物に出会ったことで、更に自分の中で断固たるものになりました。久野研二先生(元本学COE客員研究員)の『「障害者一人ひとりが平等に参加できる社会を築いていく」ことを目標にリハビリテーションに取り組んでいるならば、「ここまでは国内の仕事で、ここからは国際協力」という境界はないはずである』という言葉を見つけた時、嬉しかったですね。正に自分の考えていたことだと思いました。今、この本は私にとって「福祉」と「国際協力」を考えるうえで無くてはならないものになっています。
そうした考えのもと、国内の障害福祉分野での実務経験と派遣活動での国際協力経験を活かせる「社会福祉士」になることが、私の当面の目標と言えます。

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